お父さんの育児日記「一緒に歩く」

長男が小学校に上がってからなので丸五年がたつが、学校へ行く息子たちと一緒に職場までときどき歩いている。
片道2.5キロの山道は、桑の実を摘んだり、ルリカケスやキノボリトカゲ、時にはイノシシやハブにも遭遇することもあるが、奄美ならではの季節を感じさせる最高の通勤コースとなっている。

 

今でこそ愛情をいっぱいに受けて育ってきたと思っているが、小さい頃の私は「親の思うように育っていない残念な息子」だと歪んだ解釈をして過ごしてきた。そのせいかは分からないが、当時の記憶がまるで残っていない。
かろうじて覚えているのは、「相手の気持ちがわかる人になりたい」と願いながらも人と関わることを拒絶し、自分の世界に入り込んでいる奇妙な子供だったことだ。

 

当時から漫画や本が好きだった。一人で空想の世界に浸れることがよかった。勇敢な主人公よりも、彼らに助けてもらう脇役たちのほうが好みだった。目に見える世界だけがすべてだと思っていたあの頃、作者の想いや物語の背景を想像しながら本の世界に逃げ込んだことも今では大きな力になっている。

 

三人の息子たちも本が好きだ。読み聞かせの絵本から始まり、長男は今では子供向けの小説を読むこともある。

 

仕事が忙しくなると、息子たちと話をする時間が限られてくる。ときに叱ってばかりの一日もある。そんなときこそ、翌朝一緒に歩く。しゃべらずともお互いに「昨日は悪かった」という想いが伝わってくることがある。言葉で表現しにくい、こころの内をキャッチボールできることに成長を感じて、ひとり勝手に喜んでいる。

 

見えないもの、知らないことがあることをいつになっても忘れない、そんな大人になってほしいと願いつつ、今朝も一緒に歩いている。


お父さん:藤井愛一郎
古仁屋出身。古仁屋市街地にあるお茶のふじえん店主。
わんぱくざかりの3兄弟のお父さん

実は、妻には「子どもたちだけで登校させよう」と言われている、
瀬戸内町古仁屋・お茶のふじえんの店主。